ボズの日記(Diary of VOZ)

VOZ(声)。ついついアタマの声に騙されてココロの声を聞き逃してしまいがちな毎日ですが、ダレカの声にも耳を傾けながら書いていきたいと思います

あらゆる角度から面白かった、井上尚弥 VS ルイス・ネリ

 昨晩の井上VSネリはホント面白かったですね。

 

 まず、ヒーローVSヒールという図式がはっきりしていて、いきなり予想外のピンチを迎えた主人公がそれを乗り越えて最後には悪役を見事にやっつける、という展開はボクシングにあまり興味のない人にもこれ以上ないほどわかりやすく興奮できるストーリーだと思いました。漫画みたい、という声が多かったのもわかります。

 でも昨日の試合は、素人も玄人も含めいろんな視点から楽しめる本当に貴重な試合だったように思います。

 

 僕は小学生の時に読んだ「あしたのジョー」と中学で読んだ「がんばれ元気」が生涯の漫画ベスト1、2を争い、30歳くらいの時に運動不足解消のためにボクシングジムに2年くらい通ったことがあって、TVやネットで日本人の世界戦はわりとよく観戦しているくらいのまあまあレベルのボクシングファンなんですが、昨日の試合はTVで観ながらもちろん興奮し、今日ネットで観直したら何か勝負事の”深み”みたいなものも感じました。

 

 僕はメンタルにかなり注目しながらスポーツを観るタイプなのですが、大舞台になればなるほど、メンタルのコンディションが与える不思議な影響は怖いほどはっきり試合に現れますよね。

 

 昨日の井上選手は今まで観たことにないくらい気合い入りまくってました。特に入場時は動作にも表情にもそれがすごく出てました。東京ドームのお客さんの熱気がそれをまた煽ったんでしょう。

 選手が気合いが入りすぎる、気持ちを入れ込みすぎると意識しない形でパフォーマンスに影響が出て、思いがけない展開を呼び込んでしまう、というのは、オリンピックやサッカーのワールドカップ、野球のWBCなど大きな舞台で特にすごく感じることです。神様がシナリオを書いたのか?みたいな展開になったりすることよくありますよね。

 昨晩の試合では、井上選手はいきなりネリにダウンを奪われるわけです。東京ドーム全体が騒然としたのが画面上からも伝わってくるほどでした。

 

 実況のアナウンサーはドネアのパンチでも倒れなかった井上がダウンした!と言ってましたが、ダウンというのはもちろんパンチの強弱の影響もあるでしょうが、それ以上にタイミングの問題なのだと僕は思います。(僕みたいな浅いボクシングファンが偉そうに言えることじゃないですけど、、)

 ネリにしても全力のパンチではなかった感じがしましたし(あれが力のこもったカウンターだったら怖かったですが、、)。

 僕が思い出したのは、同じ東京ドームで2年前に行われた武尊と那須川天心の試合。どんな強いパンチでも倒れたことがなかった武尊選手が天心選手のカウンターにくるん、と回転するように倒れましたよね。見事なタイミングでした。

 あの時の武尊選手もものすごく気合いが入りすぎている状態のように見えました。全身が力んだ状態で、思いもかけないタイミングでパンチを受けると、本人も気づいたら転がっていた、なんてことがよくあるようです。

 

 いつもの井上選手の冷静なメンタルだったら、ダウンせずに相手を倒すこともできたでしょう。倒すまでもう少し時間がかかったかもしれないですが。

 でも、観ている側としたら、負けないことに徹して冷静に確実に倒す試合よりも、一回ダウンしてそこから倒し返す方が全然盛り上がりますよね。それでこそ、興行、プロスポーツです。ただ、ボクシングの場合は命に関わることですから、安易に勇気を出して打ち合え!なんて言えないですが。そういう意味で、井上選手ネリ選手両者ともに果敢で、強い気持ち、覚悟を感じました。

 2ラウンド目からは井上選手は冷静になろうとし始め、ダウンを奪い返してお互いのポイントがイーブンになってからは、完全にいつもの井上選手になっていました。

 パンチを確実に当て、ネリ選手のパンチを見切れるようになると、井上選手がここ打ってこいよという感じで挑発したりしたのは、もう心理戦ですよね、焦った方がどんどん負けに近づいていくのはどんな勝負事でも明白なことです。

 テクニックがあって、スピードが早く、パンチも強い、という能力的に完璧なボクサーの井上選手ですが、その上にこういう心理戦もやれるところがすごいと思います。メンタルの重要さを誰よりもわかっているんですね。

 ダウンしてからの彼の落ち着いた対応を、いろんなボクシング解説者がネットで誉めていましたが、メンタルを常に意識して戦っている、というのが彼の強さの基盤を強くしているのだと僕は思いました。

 テンション上がりまくってやや固くなっていたところでダウンを奪われて、そこから冷静に立て直し少しずつ自信を取り戻し、だんだん自分が優位になると今度は相手のメンタルを揺さぶっていったわけです。

 ネリ選手が試合後相手のペースにハマってしまった、と言ったそうですが、まさにそういうことなんだと思います。

 

 じゃあ、井上選手は技術的にはどうやって組み立てて流れを作っていったのか、これは素人の僕には全然わからないので、プロの意見を聞くしかないのですが、今は引退した選手から現役選手まで、いろんな方がYouTubeチャンネルをやっていて、いろいろ観たのですが、元WBO世界ミニマム級王者の谷口将隆さんの解説が丁寧で、こんな細かく高度な技術を積み重ねていたのかとびっくりして、僕としてはすごく面白かったです。

 

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