ボズの日記(Diary of VOZ)

VOZ(声)。ついついアタマの声に騙されてココロの声を聞き逃してしまいがちな毎日ですが、ダレカの声にも耳を傾けながら書いていきたいと思います

”自分”てなんだろう?(2)〜橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』

 2021年に発売された橘玲さんの『スピリチュアルズ「わたし」の謎』は、自分って何だろう?というテーマの最も新しい検証の本です。

 ”スピリチュアル”とはこの本の中では「無意識」に「魂」を重ね合わせた言葉で

「わたしもあなたも、たった”8つの要素”でできている」

 という理論を、最新の脳科学進化心理学、行動遺伝学などの最新のデータをたくさんおりまぜながら実証していくんですね。

"8つの要素”とは以下のことです

(1)明るいか、暗いか(外向的/内向的)

(2)精神的に安定しているか、神経質か(楽観的/悲観的)

(3)みんなといっしょにやっていけるか、自分勝手か(同調性)

(4)相手に共感できるか、冷淡か(共感力)

(5)信頼できるか、当てにならないか(堅実性)

(6)面白いか、つまらないか(経験への解放性)

(7)賢いか、そうでないか(知能)

(8)魅力的か、そうでないか(外見)

 人が”他者に出会ったとき(無意識に)注目する”要素”はこの8つに集約され、すなわち他の人から見た”あなた”はこの8項目で判断されている、というわけです。

 他者から見た自分、という点が大事なんですね。

 自分から見た自分なんて自分でもわかりませんし(言いまわしがくどいw)、きっと永遠の謎のままです。”自分探し”をするのは、その動機を探っていくと、他者との関係や社会の中での自分というものに何らか疑問や問題を感じているからなんじゃないでしょうか。

 他者から見た自分というのを客観的に再検証することが、”自分”を知るための最新のアプローチ方法であり、この世の中で”自分が生きやすくする”最善の方法なのかもしれません。

 この本に書かれている最新の実験結果や検証、考察は興味深いことばかりなんですよね。例えば、外向的か内向的かは、不快な刺激に鈍感(外向的)か敏感(内向的)かで決まる、とか、一般的に良いとされる「共感力」もそれが高いと排他的になり(「愛は地球を救う」のではなく、「愛」を強調すると世界はより分断されるのだ)、博愛主義者で知られるマザー・テレサガンジーは近い人間にはかなり冷淡だったそうで、共感力が低かったが上に「博愛」の思想を持つことができたんじゃないかという考えもすごく腑に落ちるものでした。

 

 それから、人間のパーソナリティは大体50%は遺伝で決まるもので、残りの50%は”非共有環境”つまり学校なんかの友達関係に大きく左右されて、子育ての努力はほとんど影響がない、というのもなかなか衝撃的なデータです。

 宿命(遺伝)半分、偶然(友達関係)半分、ってことになりますから、必死に何かに抗うように自分の性格を変えようと努力するのはただただ辛いだけなのかもしれないですね。

 

 橘さんは最後にこの本をこんな風に締めていて、僕も今現在の”最適解”のように思います。

『「自分さがし」というのは、突き詰めて考えるなら、自分のキャラ(パーソナリティ)とそれにあった物語を創造することだ。おそらくは、人生にそれ以外の意味はないのだろう。』

 そう考えると、このアプローチは世界中を放浪したりすることじゃなくて、昨日のブログで紹介した、みうらじゅんさんの<憧れているけど自分になれる可能性のないものをどんどん消していって、最後に残ったものにハマって生きる)という<自分なくし>の方にかえってかなり近いんじゃないかと僕は思いました。